日本財団 図書館


 

009-1.gif

 

日本人の方はごく稀にいる二十代の若い二〜三等航海士、二〜三等機関士を含めても平均年令が四十代と高くなっており、長年食べ慣れた日木食に愛着を感じるのも無理からぬこと、フィリピン人コックの腕が日本人の船内生活では最大の関心事である。
幸運にもチーフコックは乗船前にマニラの研修所で日本食の調理講習を受け、それ以前にも混乗船で日本人国司厨長から日本食を習っていた。
朝は味噌汁で始まり、麺(めん)頼、どんぶり物等、中年年好みの日本食からラーメン、カレー等の準日本食ともいえる中華や洋食までフィリピンクルーとは別のメニューが常に入っており、まずは及第点。とは言っても、自分で食べた経験のない日本食を味付け、調理することを考えれば余りに多くを望むこともできない。私としても麺の茹で方、茹で加減くらい休暇中に習っておけばよかったと何回か思ったものである。
<言葉について>
仕事に関しては英語が使用され、お互いに概ね通じている。ただ、仕事に限らずもう少し英語がわかればと思うことも多い。英語はもとより、この混乗船乗船を機会にタガログ語に取り組むことも考えている。なお、フィリピン人は一般的に英語を話し、書くことができるが、レベルは教育程度、出身島により異なる傾向がある様に感ずる。
<フィリピンクルーと家族のきずな>
通常では、乗船・契約期間の十ヶ月は会えないので、家族、親類、縁者とせっせと手紙の交換をしている。その量たるや日本人の数倍はある。
先航、韓国車揚げのため全く思いがけなく、マニラに寄港した。着岸すると驚く程大勢の訪船者−他の島々から飛行機で、フェリーで、またルソン島内からもバスを乗り継いでやって来た家族や親類が待っていた。
この思いがけない機会に遠路をいとわず会いに来たのである。一方、クルーはマニラ寄港が決まると早速家族に連絡し、コツコツ貯めていたお金で、会いに来る家族や親類のためにお土産を買い、お小遣いまで用意していた。核家族化の進んでいる日本とは大きな違いである。
外国人船員に限らず誰に対しても相手を理解しようという気持ちを大事に、そして誰に対してもフェアでありたい。できれば乗組み全員が気持ちよく働けることを願っている。

 

009-2.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION